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脚本:妻が恋した男

妻が恋した男

「妻が恋した男」…単発物コメディ

脚本:西条道彦

昭和47年10月19日[30分物(日本テレビ)]…300円

作:西条道彦
 「中年のプレイボーイ、44歳の大会社の部長が22歳の美女を妻にした。5度目の結婚だ。が、妻には策略があった。 彼は行きつけのバーでバーテンに悩みを告白した。 三橋達也と范文雀のオシャレなラブコメディー

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脚本:妻が恋した男

 「妻が恋した男」(イントロ)
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 夜9時〜9時30分・単発ドラマ


  (日本テレビ昭和47年10月19日放送)


 主演・三橋達也・范文雀


 日本テレビ「夫婦学校」シリーズ


 タイトル『妻が恋した男』


 脚     本 西 条 道 彦
 演     出 川 原 康 彦


 登場人物


 良   介 ………………三 橋 達 也
 亜   矢 ………………范   文 雀
 伊 佐 夫 ………………睦   五 郎
 マ ス ター………………熊 倉 一 雄
 マ ダ ム ………………三 浦 布美子
 支 配 人 ………………
 そ の 他


 1 バー・A(N)           
   「いらっしゃいませ」と、カウンターに
   おしぼりが置かれる。        
   銀座あたり、小さいが、大変しゃれた造
   りの店である。           
   カウンターの中は中年のマスター。  
   客は向かい側に今きたダンディーな中年
   紳士杉本良介。店内はその二人だけ。 
 良介「六ヶ月ぶりぐらいかな?」     
 マスター「丁度そんなもんです。ご結婚なさ
  った途端、ぱったりと……」      
 良介「(苦笑して)そうだったかな? きょ
  うはここで待ち合わせしてるんだ」   
 マスター「奥様と。それはそれは……何時に
  ?」                 
 良介「九時半」             
   壁の時計は九時──放送時間と同時に針
   が進む。              
 マスター「(時計を見て)じゃ、三十分もあ
  りますね。何かお作りしましょう」   
 良介「うむ、いつもの奴」        
 マスター「はい(と高級ウィスキーをつぎな
  がら)ご円満ですか?」        
 良介「まあね」             
 マスター「それは結構でした」      
 良介「む?」              
 マスター「え? いえね、ご結婚の三、四日
  前にご一緒にいらした時、奥様ちょっと不
  安そうにしていらっしゃったので……」 
 良介「(気にかかる)どんな風に?」   
 マスター「いえ、これは私の思いすごしでし
  ょう。あまりにもお若い奥様……いや、失
  礼申しあげました」          
 良介「いや、思い当たることがあったのなら
  いってくれよ。            
 マスター「は? どうかなさったんですか?」
 良介「うむ……いや、確かにわれわれ、年が
  はなれすぎてたと思うんだ、二十二もちが
  うんだからね」            
 マスター「ええ、二十二と四十四、つまりダ
  ブルスコアだって……」        
 良介「うむ……最近、ひどく悩んでるらしい
  んだ」                
 マスター「奥様がですか?」       
 良介「うむ(深刻になって)」      
 マスター「……(興味)」        
 良介「好きな奴ができたらしいんだ」   
 マスター「え? まさか……部長さんに好き
  な人ができたとおっしゃるならわかります
  がね、かなりあちこちでお泣かせになった
  とか……」              
 良介「人聞きの悪いこというなよ。いやもっ
  とも、そもそもことの起こりはそんなとこ
  ろにあったんだがね」         
 マスター「フムフム!」         
 良介「彼女が告白したんだ」       
 マスター「フム!」           
 良介、グラスをかたむける。       
 良介の声「結婚する一週間ほど前だった」 
 マスター「フムフム!」         
                     

 2 サパークラブ・Bの前(N)     
   良介、新妻亜矢に腕をかし、ドアボーイ
   の案内で入ってくる。        
   支配人が出迎える。         
   亜矢は社交界の花とでも表現すべきか、
   高価な衣裳をさらりと着こなしている。
   和服もあでやかなマダムが出迎える。 
 マダム「まあ部長さん、いらっしゃいませ」
 良介「うむ、ママ一度連れてこいっていって
  たろ?」               
 マダム「え?(亜矢を見て)まあ、こちらが
  今度ご結婚なさる……?」       
 良介「何だね、そんなキョトンとした顔をし
  て……」               
 マダム「いえ、お若いとはうかがってました
  けど……」              
 良介「(苦笑し、支配人に)君……」   
 支配人「はい、どうぞ……」       
   と案内して奥へ──         
   亜矢をそっと押しとどめるマダム── 
 マダム「あなた……失礼ですけど、私の妹と
  同じぐらいとお見受けするもんで……」 
 亜矢「何か……」            
 マダム「部長さん、何人奥様おかえになった
  かご存じ?」             
 亜矢「(ケロリと)私で五人目ですってね?」
 マダム「ご存じで……?」        
 亜矢「そのほかにも恋人らしき人が何人かい
  るんでしょ?」            
 マダム「………」            
 亜矢「ママさんありがとう。何かあったら力
  になって頂くわ。でも私、作戦があるの」
 マダム「作戦?」            
 亜矢「(ニンマリうなずく)」      
 良介の声「その時ママはすごく不吉な予感を
  おぼえたっていうんだ」        
 マスターの声「フムフム!」       
                     

 3 タイトル              
                     

 4 マンション・玄関(N)       
   チャイムが鳴る。          
   ドアをあけて良介を迎える亜矢──  
 良介の声「まず結婚して三日目に、彼女のイ
  トコで北海道から出てきたと称する男が現
  れたんだよ。俺の留 守中に家へあがり込
  んでたんだ」             
 マスターの声「ホホウ……」       
                     

 5 同・寝室              
   入ってきて着替える良介と、手伝う亜矢
   ──                
 良介「イトコ?」            
 亜矢「ええ、あなたにはまだお話してなかっ
  たけど……」             
 良介の声「あとでわかったんだが、そのイト
  コというのは真っ赤な嘘だったんだよ。ど
  うも目つきが悪いと 思ったんだがね」 
 マスターの声「フムフム!」       
                     

 6 同・リビングルーム         
   伊佐夫(32)の待つところへ、着替えを
   すませた良介と亜矢がくる。     
 亜矢「伊佐夫さん、主人よ」       
 伊佐夫「ああ、森伊佐夫です」      
 良介「(ちょっと複雑な気持)ようこそ……」
 亜矢「伊佐夫さんねえ、事業をやりたいんで
  すって。あなたにも力をかして頂きたいっ
  て」                 
 良介「ほう、事業を?」         
 伊佐夫「ええ、実は親父の山を売って小樽で
  レストランをやっていたんですが、今度は
  銀座に店をもちたいと思いまして……」 
 良介「銀座に?」            
 亜矢「安い出物のお店ってないかしら?」 
 良介「え? さあ……」         
 亜矢「バーやクラブのママさんたちに聞いて
  みてくださらない?」         
 良介「うむ……そうだな……で、お住いは?」
 亜矢「うちへ泊まりなさいっていったんだけ
  ど」                 
 良介「!」               
 亜矢「ホテルをとるからって」      
 良介「ほう……」            
 亜矢「明日から私も一緒に歩いてさがしてあ
  げるわ」               
 伊佐夫「すまないね、何しろ東京は不慣れだ
  から」                
 亜矢「ううんいいのよ、そうだわ、明日ホテ
  ルから出る時うちへ電話ちょうだいよ。番
  号ひかえといて。うち電話二本あるから」
 伊佐夫「うむ」             
   と手帳を出しながら、良介に見られてい
   るのを意識して、オドオドと目をそらす。
                     

 7 同・寝室(N)           
   ダブルベッドに寝ている夫婦──   
   良介は不機嫌だ。          
 亜矢「どうしたの? だまりこくっちゃって」
 良介「うむ……ねえ亜矢」        
 亜矢「え?」              
 良介「たとえイトコといえども、亭主の留守
  中に男を家へあげるもんじゃないよ」  
 亜矢「あらどうして?」         
 良介「どうしてって……そういうものなんだ
  よ」                 
 亜矢「………」             
 良介「二人っきりでいると、男っていつ変な
  気をおこすかわからないものなんだよ」 
 亜矢「へえ……」            
 良介「へえって……」          
 亜矢「ああ、そういう意味」       
 良介「え?」              
 亜矢「フフ……」            
 良介「何がおかしい」          
 亜矢「だってあの伊佐夫さんがそんな……」
 良介「あの伊佐夫さんもこの伊佐夫さんもな
  いんだよ。男は誰でもそうなんだ」   
 亜矢「ふうん……あなたもそうだった……」
 良介「そうだったって……いや俺は一般的な
  ……」                
 亜矢「はい、わかりました(寝返りをうつ)」
 良介「………」             
 マスターの声「ハッハッハ……その時の部長
  さんのお顔、拝見したかったな」    
 良介の声「だまって聞きなさい」     
 マスターの声「はいはい」        
 良介「あしたから、ついて歩いてやらなけれ
  ばならないのかい」          
 亜矢「(向き直り)うむ、イナカッペですも
  の。でもいけないの?」        
 良介「え? いや……」         
 亜矢「どしてそっち向くの?」      
 良介「え? いや別に……」       
 と亜矢のほうに向き、亜矢、良介に甘え  
 るように体をよせる。          
 マスターの声「テッ!」         


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