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脚本:亭主貸します

亭主貸します

「亭主貸します」…単発物コメディ

脚本:西条道彦

昭和41年10月15日[1時間物(日本テレビ)]…500円

 ハワイの億万長者のおば・笠置シズ子が帰国する。 嵯峨美智子と桜井センリ夫婦は金ほしさから中村メイ子・犬塚弘夫婦と相談。 おばに取り入る条件のため互いの夫を交換するが……ドタバタに近い諷刺コメディー

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脚本:亭主貸します

 「亭主貸します」(イントロ)
 ここにはこのような形でしか載せられませんが、
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  夜9時30分〜10時30分・単発ドラマ


  (日本テレビ 昭和41年10月15日(土)放送)


 タイトル『亭主貸します』


 脚     本 西 条 道 彦
 演     出 川 上 衆 司
 制     作 中 島 忠 史
 音     楽 広 瀬 健次郎


 登場人物


 三田村 龍之介………犬 塚   弘
  〃  さつき………中 村 メイ子
 樫 山 剛 一………桜 井 センリ
  〃  洋 子………嵯 峨 美智子
 秋 草 ハ ナ………笠 置 シズ子
 権 藤 秀 吉………な べ おさみ
 銭 高 ミ ヤ………花 岡 菊 子
 そ の 他            


 1 書類のアップ            
   『離婚届三田村龍之介、三田村さつき』
   そこに、二人の声がかぶさる。    
 龍之介の声「後悔しない?」       
 さつきの声「後悔? フン! 骨まで愛想つ
  かしたわ」              
 龍之介の声「骨まで愛想?」       
 さつきの声「そうよ、あんたみたいなグータ
  ラ。作品を書けない推理作家なんて、生き
  てる価値ないわよ」          
 龍之介の声「そうか……じゃ、止むを得ない」
 さつきの声「さ……」          
   印鑑持つ女の手がのびる。      
 さつきの声「何グズグズしてるのよ」   
   男の手もしかたなくのびてきて、二人の
   手、正に捺印しようとする。     
   玄関チャイムの音。         
   二人の手、ピクリととまる。     
                     

 2 三田村家・リビングルーム      
   マンション二階の一室──      
   印鑑を手にした龍之介とさつき。   
   龍之介「君(アゴで命令)」     
 さつき「何よ、あなた行きなさいよ」   
 龍之介「……(うらめしそうな目で見る)」
                     

 3 同・玄関前             
   樫山剛一と妻の洋子が来ている。   
   何か思いあぐねた様子である。    
   ドアがあき、顔を出した龍之介、怪訝そ
   うに頭をさげる。          
 洋子「あの、奥様いらっしゃいますでしょう
  か?」                
 龍之介「え? 女房……ええ、います。あの、
 どちら様で……」            
 洋子「先日この隣の隣の部屋へ越してきた者
  なんですけど……」          
   奥からさつきが出てくる。      
 さつき「あら、樫山さんの奥様……(ポカン
  としている龍之介に)化粧品を買って頂い
  てるお得意様よ。ご挨拶ぐらいしたら?」
 龍之介「ああ(頭をさげる)」      
 洋子「はじめまして」          
   洋子の後ろから剛一も頭をさげる。  
 さつき「あらご主人もご一緒に……どうかな
  さったんですの?」          
 洋子「ええ、実は先日おいでになった時、困
  ったことがあったらいつでも来なさいって、
  おっしゃってくださったもんで」    
 さつき「ええええ、そりゃ私でできることで
  したら……さ、どうぞおあがりになって…
  …」                 
                     

 4 同・リビングルーム         
   さきに戻ってきた龍之介、慌てて卓上の
   書類や印鑑を片づける。       
   さつきの案内で、樫山夫妻入ってくる。
 さつき「さ、どうぞ……」        
   樫山夫妻、座る。          
 さつき「どうなさいましたの? そんな深刻
  なお顔なさって……新婚ほやほやなのに、
  まさか夫婦喧嘩じゃないでしょうね?」 
 洋子「いえ、実はこれなんですの(と航空便
  の封書を見せる)」          
 さつき「ちょっと拝見(と見て)ハワイから
  ですのね? 中を読んでもいいんですか?」
 洋子「ええ、若いころ結婚してハワイへ行っ
  たおばからなんですけど……そのおばが帰
  ってくるっていうんです」       
 さつき「ハアハア三十年ぶりって書いてあり
  ますわね」              
 洋子「ええ、それで困っちゃってるんです」
 さつき「なぜ?」            
 剛一「いや、バカバカしい話なんですよ全く
  ……実は、家内の家は女系家族っていうん
  ですか、代々長女が養子をとるならわしに
  なっておりましてね、でまあ、家内は一人
  っ子ですし、私もしかたなく養子というこ
  とにして結婚したんですが、その……家憲
  っていうんですか、先祖代々養子をとる時
  の条件というのが 何カ条か決められてお
  りましてね、フン! バカバカしい話です
  よ全く(洋子につねられて)痛い!」  
 さつき「ハアハア……で、その条件というの
  は……」               
 洋子「他の条件はすべてこの人合格なんです
  けど、たった一つ失格なんです」    
 さつき「とおっしゃると……」      
 洋子「チビを養子とするなかれ……」   
 剛一「チビというほどじゃないですよね、私
  は決して……」            
 洋子「五尺八寸以上の男でなければいけない
  んです」               
 さつき「フウン……(何気なくそばに立って
  いるノッポの龍之介を見る)」     
 龍之介「………」            
 さつき「座ったら?」          
 龍之介「うん(と座る)」        
 洋子「まさかこのおばが帰ってくるなんて夢
  にも思わなかったもんで、結婚通知を出し
  た時、つい余計なことを書いちゃったんで
  す。家憲を忠実に守りましたって……」 
 さつき「ああ……今さら背をのばすっていう
  わけにもいかないし……いいじゃないです
  か、あっさり謝ってしまったら……背ばか
  り無駄にズルズル延びてるより(と龍之介
  を見ながら)こじんまりまとまって中身の
  濃いほうがずっといいんだからって」  
 龍之介「………」            
 洋子「それが……そうしようかどうしようか
  って迷ってるんです」         
 剛一「実は今われわれの会社が経営不振でし
  てね、ちょうど絶好のチャンスだから、こ
  の際おばさんに融資してもらいたいと思う
  んですよ」              
 さつき「ハハア、そういう魂胆がおありなん
  ですか……」             
 剛一「ええ、そのおばさん、向こうで成功し
  て億万長者になっているそうなんですよ」
 さつき「億万長者に……へえ……」    
 洋子「そんなことを頼むからには、私が嘘を
  ついたと思われるのは不利じゃないかと思
  うんですけど、どうでしょうか」    
 さつき「そうねえ(と何気なく龍之介をジッ
  と見る)そうだわ! だったらそのおばさ
  んがいらっしゃる間ピンチヒッターにこの
  人をお使いになったらいいわ」     
 洋子「え? お宅のご主人を!?」     
 さつき「ほかに取り柄はないけど、背だけは
  六尺ちかくありますものね、お使いなさい
  よ、減るもんじゃなし」        
   ポカンと呆気にとられる龍之介──  
                     

 5 タイトルバック           
   マンション全景(朝→夜→朝)    
  『亭主貸します』           
                     

 6 同マンション・管理人室・前(朝)  
   玄関脇、廊下に面して病院の受付のよう
   なガラス窓があって「管理人室」のプレ
   ートがあり、前にピンク電話が一つ置い
   てある。              
   玄関のドアがあき、風変わりな中年女、
   秋草ハナが入ってくる。       
   ハナ、管理人室の前に立ち、ガラス窓を叩く。
 ハナ「ハロー……ハロー」        
   管理人の権藤、窓をあけてのぞく。  
 権藤「はい(まごついて)ハロハロ……」 
 ハナ「このマンションに、樫山洋子というレ
  ディー、住んでますね?」       
 権藤「レディー……ああ、二階の樫山さんの
  ことですか……」           
 ハナ「私はおばの秋草ハナです。そのルーム
  へ案内して頂戴」           
 権藤「アンナイ……(キョトンとなる)」 
                     

 7 樫山家・リビングルーム       
   室内の家具調度品にいたるまで、新婚家
   庭の甘いムードがただよっている。  
   部屋の角に、洋子のデスクがあり、下着
   デザイナーの彼女の仕事場をかねている。
   ソファーに横たわったナイトガウン姿の
   剛一に、洋子がむいだ梨をフォークにさ
   して食べさせながらごく甘い調子で、 
 洋子「ねえ、あなた……どうなさる?」  
 剛一「うん(と食べながら)そりゃあの奥さ
  んの好意はありがたいとは思うけどねえ」
 洋子「あの夫婦、離婚寸前だっていうんでし
 ょ? マアだからあんなに簡単に亭主を貸し
 ますなんていえた んでしょうけど……」 
 剛一「それだけに余計心配なんだよ。そんな
  男が俺の代わりにこの部屋で君と暮らすな
  んて……」              
 洋子「心配なのは私のほうよ。私はおばさん
  と一緒なんだけど、あなたはあの奥さんと
  二人っきりであそこで暮らすんですもの」
 剛一「だから俺はどこかホテルへでも泊まろ
  うかっていったじゃないか」      
 洋子「だからそれは余計心配だっていったで
  しょ。あなたが私が呼んでも聞こえないと
  ころに泊まるなんていや」       
 剛一「(ダラリと顔がゆるむ)やめようか?
  おばさんきたら謝っちゃおうか」    
 洋子「そうしたいわ、いい?」      
   フォークと皿をキッチンへ持っていく。
 剛一「……でも困るんだなあ、会社は今が一
  番大事な時だし……こんなチャンスないも
  んなあ」               
   玄関チャイムの音。         
   剛一、口をモグモグさせながら立ってい
   ってボタンを押す。         
 剛一「はい」              
 権藤の声(部屋全体に聞こえる)「あ、お客
  様ですよ。ハワイからおいでになったとか、
  おっしゃってるんですが……」     
 剛一「(ボタンを放し)来た!」     
   洋子も顔色を変えてくる。      
 剛一「どうしよう」           
 洋子「どうしましょう」         
 剛一「と、とにかく、俺がこの部屋にいちゃ
  まずいな。俺を見たら一発で失格だ」  
   とあっちへ行ったりこっちへ行ったりし
   て迷う。              
 洋子「しようがないわ。どこかに隠れてて」
 剛一「どこか?」            
 洋子「おばさんをここに入れたらそっと外へ
  出るのよ」              
 剛一「出てどうするんだい」       
 洋子「それから先はまた考えましょうよ。早
  く」                 
                     

 8 同家・玄関前            
   待っているハナと権藤──      
 権藤「遅いですねえ」          
 ハナ「いま返事をしたのが洋子のハズだね?」
 権藤「いえ、ご主人の筈です」      
 ハナ「ご主人のハズ? ああ、その筈ね」 
 権藤「……(怪訝顔)」         
   ドアがあき、洋子が顔を出す。    
 ハナ「洋子かい?」           
 洋子「はい、おばさんですね?」     
 ハナ「(懐かしそうに)大きくなったねえ…
  …これがあの、姉さんの子ども……(鼻を
  つまらせ)姉さん、生きてればよかったの
  にねえ……」             
 洋子「(肉親の情を実感)さ、おばさん、早
  くお入りになって」          
 ハナ「うん……(権藤へ)サンキュ」   
   と百円玉を一つやってドアをしめる。 
 権藤「(見て)百円……チェ、バカにしやが
  って……なるほど、これが外国のチップっ
  て奴か……ま、悪い習慣ではないな、うん」
   とホクホク顔で帰っていく。     
                     

 9 同・寝室              
  ドアに耳をつけている剛一──      
                     

 10 同・リビングルーム         
   洋子に案内されて入ってくるはな── 
 ハナ「(急に眉ひそめて立ち止まる)そうそ
  う洋子、ハズバンドは?」       
 洋子「え?」              
 ハナ「亭主。あんたの結婚した相手だよ」 
 洋子「ああ、今、ちょっと会社のほうへ出か
  けてるんです」            
 ハナ「え? おかしいな……さっき確か男の
  声だったよ、ハイって……」      
 洋子「あらいやだわ、私ちょっと風邪気味な
  んで……だから変な声に聞こえたんでしょ
  ?」                 
 ハナ「(無気味そうに)本当かい? どっか
  にいるんじゃないだろうね」      
   と奥をのぞきみる。         
                     

 11 同・寝室              
   剛一、慌ててベッドの向こうに身を伏せ
   る。                
                     


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