作品販売 脚本:沖田総司

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脚本:沖田総司

沖田総司

「沖田総司」…連続(4回)時代劇

昭和43年11月6,13,20,27日[1時間物(テレビ朝日)]…1000円

脚本:西条道彦
 新撰組最強の天才剣士沖田総司は、青雲の志に燃えて近藤・土方らと共に京へ向かうが、 そこで彼が見たのは志士と称して夜盗のごとく街を荒らす食い詰め浪人たちで、熱血の沖田はそれを許せず、恋人との純愛も露と消えた。 幕末の重要人物たちを含め史上最多の人を斬った25年の短い生涯とは…… (主演−梅宮辰夫)

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脚本:沖田総司

 「沖田総司」(イントロ)
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  テレビ朝日「日本剣客伝」シリーズ


  (1時間ドラマ4回連続)昭和43年11月6・13・20・27日放送)


 タイトル『沖田総司 1』


 脚      本  西 条 道 彦
 監      督  佐 伯   清
 プロデューサー  片 岡 政 義
            吉 川   進
 制      作  NET(現テレビ朝日)
            東映京都制作所


 登場人物


 沖 田 総 司 (20)………梅 宮 辰 夫
 近 藤   勇 (28)………中 村 竹 弥
 土 方 歳 三 (27)………寺 島 達 夫
 井 上 源三郎(34)………影 山 雄 司
 妹 尾 桐十郎(16)………黒 田 賢 二
 お      光 (29)………若 原 啓 子
 お      浜 (18)………明 星 雅 子
 山 岡 鉄 舟 (27)………根 上   淳
 芹 沢    鴨 (36)………山 本 麟 一
 平 山 五 郎 (34)………室 田 日出男
 山 南 敬 助 (30)………東  千代之介
 藤 堂 平 助 (20)………根 岸 一 生
 原 田 左之助(24)………曽 根 晴 美
 永 倉 新 八 (25)………岩 城 力 也
 そ   の   他


 1 版画                
   黒船来航──            
 N「黒船の来航で、泰平の夢を破られた日本
  は、ようやく近代化への胎動を始めた」 
   江戸の平和な生活──        
 N「文久三年……幕府の権威地に落ちたとは
  いうものの、当時の日本は幕府の力によっ
  てともかく治安は保たれていた」    
                     

 2 京の街               
   富商が小僧に提灯を持たせて、夜道を行
   く。                
 N「(続いて)しかし京の街だけは……」 
   提灯が宙に舞い、辻斬りの白刃がひらめ
   く。                
   斬った志士は、倒れた富商の懐の物を奪
   って逃走──            
 N「(続いて)志士と称する各藩の下級武士、
   脱藩浪士たちが続々乗り込み、日夜横行
  ……」                
   商家に押し込み強盗に入る志士──  
   酔った志士が町娘をさらって行く。  
 N「(続いて)口では立派なことを唱える志
  士たちも、所詮は経済的に苦しい者ばかり、
 中には押し込み強 盗、辻斬りを働く食い
  詰め者、乱暴を働く無頼漢にも等しい連中
  も多く、混乱の日々を続けていた。こうし
  た志士の横行は、所司代の手では抑えきれ
  なくなり、幕府も手を焼いていた。新撰組
  は、このような乱れた京の治安回復のため、
  幕府のとった苦肉の策として生まれた集団
  である」               
   居酒屋であばれ、亭主たちを困らせる志
   士たち──             
   新撰組が入ってきて手向かう奴らを斬る。
   白昼商家でユスリを働く。新撰組が斬る。
 N「(続いて)後世に、人斬り集団として暴
  力団的評価をあたえられた新撰組だが、当
  時の彼らは、京の治 安の維持という目的
  のため、誇りをもって働いた熱血純情の青
  年たちなのである」          
   沖田総司(20)、原田左之助(24)藤堂
   平助(20)が制服の羽織姿で闊歩する。
                     

 3 タイトル              
                     

 4 河原                
   若い一対の男女が散策を楽しんでいる。
   沖田と武家娘お浜(18)。平和で幸せな
   ひと時をすごす恋人同士の甘い姿である。
 N「沖田総司……九歳にして天然理心流三代
  目の宗家近藤周助の門に入る。同じく周助
  の弟子で周助の養子となった近藤勇は、沖
  田の兄弟子である。幼いころから剣の天才
  といわれた沖田が、奥州白河藩の剣術指南
  番と立ち会い、これを破ったのは、彼がわ
  ずか十二歳の時であった。そして剣一筋に
  生き、実際に人を斬った数においては、日
  本剣客史上沖田の右に出る者はまずないと
  いわれるほど、斬って斬って斬りまくった。
  更に、沖田が斬った人々がもし生きていた
  なら、明治維新はその時期、形の上で、変
  わったものになっていたであろうと思われ
  るほど、彼は幕末の重要人物たちを数多く
  斬り、彼自身も二十五歳で短い生涯の幕を
  閉じたのである。史上名高い池田屋事件が
  元治元年──その前年、すなわち文久三年
  の春には、沖田はまだ平和な日々を送って
  いた……」              
                     

 5 試衛館・前             
   〔剣術指南・試衛館〕の看板──   
 N「近藤勇の道場試衛館は、牛込柳町にあっ
  た。元大工の棟梁が住んでいた家を買いと
  ったもので、当時有名だった千葉周作の玄
  武館などを一流とするなら五流か六流、取
  るに足らぬ小さな道場であった」    
   沖田が帰ってくる。         
   反対方向から、探していた門弟Aが駆け
   戻ってくる。            
 門弟A「沖田先生……(息をはずませ)塾長
  先生が探していらっしゃいます」    
 沖田「近藤さんが?」          
 門弟A「はい、道場破りが来たんです。北辰
  一刀流の免許者だとか……」      
 沖田「千葉道場か……」         
   思わずニヤリとなる。嬉しいのだ。  
                     

 6 道場脇の廊下            
   沖田、来る。            
   道場をのぞくと、近藤勇(30)山南敬助
   (30)、それに、二人を引き合わせた藤
   堂の三人が、なごやかに話している。 
   山南は武芸学術ともにすぐれた、ひとか
   どの人物──            
   沖田が入ってくる。         
 沖田「近藤さん、お呼びですか?」    
 近藤「(山南に)師範代の沖田です」   
 山南「山南敬助です、お名前はかねがね藤堂
  君から……」             
 沖田「沖田総司です(と明るく会釈を返し)
  道場破りというのはこのかたですか?」 
 近藤「む?(ゆったりと含み笑い)」   
 藤堂「道場破りなどとは……沖田、山南さん
  は俺と同じ千葉周作先生の門下なんだ。俺
  が最近近藤先生の道場へ通っていることを
  お話ししたら、是非一度連れて行ってくれ
  とおっしゃって……」         
 山南「(にこやかにうなずく)近藤先生は他
  流試合を歓迎なさるとうかがっております」
 沖田「そうですか……それで?……」   
   と藤堂を見る。           
 藤堂「うん、君に手合わせを望んでいらっし
  ゃる。近藤先生のお許しも頂いたんだ」 
   沖田、近藤を見る。         
   近藤、頷く。            
 沖田「承知しました。では……」     
 山南「お願いします」          
   門弟たちが防具を用意する。     
   二人、仕度をし、竹刀をとって向き合う。
   数呼吸──             
   だが所詮山南も沖田の敵ではなく、すり
   あげられ、面を打たれた揚げ句、三段の
   突きを受け(それらの動作が一挙動にみ
   えるほど早かった)かろうじて最初の突
   きを払い得たのみで、羽目板へ突き飛ば
   される。              
 N「北辰一刀流の免許皆伝者も、沖田の前に
  はなすすべを知らなかった……実はこの道
  場では、土方歳三も竹刀をとっては沖田に
  子ども扱いにされ、近藤勇すら歯がたたな
  かったのである」           
 近藤「それまで!」           
   この試合をスローモーションフィルムで
   再現──              
 N「沖田総司の剣は常に平青眼、やや刀尖が
  さがり目、右に傾いている。それで押して
  いき、敵の刀とふれあうと、石火の速さで
  すり上げ、斬った。相手はまるで沖田に斬
  られるために刀の下に吸いよせられてくる
  のではないかと思われるほどだった。また、
  沖田の突きは非常な難剣で、彼の短い生涯
  に一人としてこの突きを受けとめた者はい
  なかった」              
 近藤「それまで!」           
 山南「参った。参りました……」     
   竹刀をおさめ、面を取った沖田、急に咳
   き込み、かがんで口へ手をあてる。少量
   の喀血!              
   ギクリとなる沖田──        
 近藤「(眉をひそめる)総司、どうした」 
 沖田「(かくして)いえ、何でもありません。
  ちょっと風邪気味でして……」     
 近藤「風邪か(と無神経に安心し)藤堂君、
  山南さんを奥へ……」         
                     

 7 奥の間               
   近藤から盃を受ける山南──     
   山南、返杯──           
 山南「怖ろしい人がいたもんだと感心してい
  ます。あの突きはとてもかわせるものでは
  ありません。近藤先生のご指導のたまもの
  でしょう」              
 近藤「いやいや……総司は?」      
 藤堂「はあ、すぐ行くから先に行っててくれ
  とのことでしたが……」        
                     

 8 道場                
   沖田、一点を凝視し、深刻な面持ち──
   喀血のショックと闘っている。    
   そっと掌を開いてみる。ベットリと血。
   沖田、立って刀をとり、鞘を払いざま空
   を斬る。激しい掛け声、鋭い切っ先──
   狂ったように斬る。払う。突く。   
   悲しみを吹き飛ばそうとしているのだ。
                     

 9 試衛館・前(夕方)         
   土方歳三(29)が帰ってくる。    
 N「文久三年春、幕府は清河八郎の献策によ
  って浪士を募集した。そのニュースを最初
  につかんで帰ってきたのは土方歳三である」
                     

 10 奥の間               
   近藤、土方、それに沖田と中年の兄弟子
   井上源三郎も加えて真剣な話し合いであ
   る。                
 井上「若先生、やりましょう。われわれ四人
  は兄弟弟子というより本当の兄弟のような
  仲なんですから、私は若先生がおやりにな
  ることならいつでも喜んで参加いたします。
  それに、こんないい就職口は二度とないだ
  ろうし……」             
 土方「やっとわれわれも日の目を見られる。
  貧しさから這い上がるんだ」      
 沖田「もう少しくわしく聞かせて下さい。幕
  府は何のために浪人を募集するんですか」
 土方「ひと言でいえば攘夷だ。弱腰の幕府の
  中にも、断固夷狄を討つべしという強硬派
  も多いからな」            
 井上「ふむふむ」            
 土方「来年の春、将軍家は京へのぼる。それ
  で、今回募集の者は、取り敢えず将軍の護
  衛として京都の守護にあたらせるというこ
  とだ」                
 沖田「京都……じゃ京都へ行くんですね?」
 土方「もちろん」            
 近藤「しかし歳さん……幕府に人がいないわ
  けじゃなし、支度金を一人あたり五十両も
  出して浮浪の徒を集めるというのは、少し
  話がうますぎるんじゃないかな」    
 土方「いや、だから松平上総介に会ってくれ
  といってるんだ。牛込二号半坂だからすぐ
  そこだし、俺の口より、浪士取扱の松平か
  ら直接話を聞けば近藤さんだって必ずその
  気になる」              
 近藤「ふうむ……」           
 井上「総司、お前いつもいってたじゃないか、
  横浜へ行って異人を叩き斬りたいって」 
 近藤「(頭から否定的)総司は、一流一派を
  編み出して剣の道で名をあげたいというの
  が子どものころからの望みだ。才能も充分
  にあるし、それが総司にとっては一番いい
  生きかただ。何も俺たちが行くといっても
  無理に付き合うことはない」      
 総司「……いえ(きっぱりと)行きます」 
 近藤「………」             
 土方「……本気か?」          
 沖田「むろんです」       (F・O)
                     

(F・I)               
 11 道場                
   槍の原田、剣の藤堂、素面で門弟たちに
   稽古をつけている。         
   原田、いっぽうに目をとめる。    
   沖田が廊下を行く。         
   原田、藤堂に近づいて肩を叩く。   
                     

 12 道場前の道             
   沖田が出てくる後から、原田と藤堂が追
   ってくる。             
 原田「沖田、出かけるのか?」      
 沖田「(ふり向いて)ああ、ちょっと……」
   二人、近づいて──         
 原田「実はさっき近藤先生に呼ばれてな」 
 沖田「………」             
 原田「浪士募集の件についてお話があったん
  だが、沖田も参加するそうだな」    
 沖田「君たちもか」           
 原田「いや、返事は明日まで待って頂くこと
  にしたんだ。こう見えても(ニヤリとし)
  色男としてはいろいろ都合があるからな…
  …お前だってそうなんだろ?」     
 沖田「………」             
 藤堂「沖田、お前近ごろ妙な咳をするようだ
  けど……まさか労咳じゃないだろうな」 
 沖田「いや、ただの風邪さ」       
 藤堂「ならいいが……お前は両親とも労咳で
  亡くしていることだし、ひょっとしたら不
  治の病にヤケをおこして京へ行く気になっ
  たんじゃないかと思って……」     
 沖田「俺は近藤さんが好きだ。初めはただそ
  れだけの理由で一緒に行く気になった」 
 二人「………」             
 沖田「しかしゆうべ土方さんの話を聞いて…
  …俺は土方さんのバクチの片棒をかつぐ気
  になった」              
 藤堂「バクチ?」            
 沖田「天下に浪人は多い……今度の募集にも
  大勢集まるだろう。まずは近藤さんをその
  浪人集団の頭に祭り上げることだ」   
 二人「………」             
 沖田「そして、その集団をふくらませて、幕
  府にとって重要な存在にまで高める」  
 二人「………」             
 沖田「こういう混乱の時代だ。機会をつかん
  で一気に……うまくいけば近藤勇を大名と
  同格、それ以上にできるかもしれない」 
 二人「(驚いて顔見合わせる)」     
 沖田「どうだ手伝うか……俺たちが団結すれ
  ばまんざら不可能なことじゃない。こんな
  貧乏暮らしに見切りをつけて、一旗あげる
  気にならないか」           
 藤堂「驚いたなあ……」         
 原田「(頷いて)そこまでは考えてもみなか
  った」                
 沖田「土方さんもいってたよ」  (O・L)
                     

 13 一室(夜)回想           
   土方が沖田に盃をやる。       
 土方「お前の親父はれっきとした白川藩士だ
  が、俺も近藤さんも百姓の出だ」    
 沖田「そんなことは、今の私たちには何の関
  係もないことです」          
 土方「俺はお前と同じように両親には早く死
  に別れたし、十一の時には上野広小路の松
  阪屋へ丁稚奉公に行った……一年ももたず
  にとび出しちまったが、俺は人からさげす
  みの目で見られると腹ワタが煮えくり返っ
  たもんだ。なにも好き好んで百姓の子に生
  まれたんじゃねえ、運よく侍の子に生まれ
  たからってデカイ面するな(苦笑し)その
  頃から俺は、この面白くもねえ世の中をひ
  っくり返してやることを考えてたもんだ」
 沖田「しかし土方さん、だったら徳川のため
  に働くのはおかしいんじゃないですか?」
 土方「手がかりがなくちゃ何もできねえだろ」
 沖田「………」             
 土方「徳川のためじゃねえ、俺たち自身のた
  めに徳川を踏み台にするんだ」     
 沖田「土方さん……(大いに感ずるところあ
  り)やりましょう。私もこのまま平々凡々
  と生きて平々凡々の内に死んでいくのが残
  念でたまらなかったんです」  (O・L)
                     

 14 道場前の道             
   沖田の話に感動している原田──   
 原田「ううむ……沖田、俺もやる!」   
   と、いきなり前をひろげて腹を出してピ
   チャピチャ叩く。          
   真一文字に切ったあとがある。    
 N「原田左之助には、死に損ねの左之助とい
  うアダ名があって、彼はふた言目には俺は
  一度死んだんだといい、腹の傷を見せて自
  慢したものである」          
   沖田と藤堂、またかといった顔で苦笑。
 原田「何がおかしい……俺が何故腹を切った
  か今まで誰にもいわないできたが、打ち明
  けよう……伊予松山で中間奉公していたこ
  ろだ。ある侍と喧嘩になった。そしたらそ
  いつがいった。何だ足軽のくせに、貴様ら
  下司野郎は腹を切る作法も知らんだろうと
  な。そこで俺はそいつの目の前で切ってみ
  せてやった(苦笑して)そいつは青くなっ
  て医者を呼びに行ったよ。……俺には土方
  先生の気持はよくわかるさ。藤堂、お前な
  んぞにはわからんかもしれんな、藤堂和泉
  守のご落胤には」           
   藤堂は、原田のような磊落さを持ちあわ
   さない生真面目な男である。     
 藤堂「俺も、このままじゃ駄目だ、今の自分
  を変えたいと思っていた……沖田、やろう」
 沖田「よし、道場剣法でなく、実際に剣の切
  れ味を試すんだ」           
   三人、頷きあい、決意を語り合う。  
 N「この三人はこれまでも何かにつけウマが
  あった。藤堂は千葉周作門下、北辰一刀流
  の使い手、原田は宝蔵院流の槍の名手……
  そしてこの三人は、土方歳三らとともに、
  新撰組をになった剣客として、後の世に名
  を残すにいたるのである」       
                     


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