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脚本:長屋の姫君

長屋の姫君

「長屋の姫君」…単発物コメディ

脚本:西条道彦

昭和42年12月2日[1時間物(日本テレビ)]…500円

 堅苦しい生活にあきあきしたお姫さまが腰元に化けて城を抜け出す。 面作りの貧乏職人長門裕之の長屋に押しかけ女房を決めこもうとするが…… 落語名作集から材を取った時代劇コメディーで、 姫君・腰元・長屋のおかみと、池内淳子の三変化。

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脚本:長屋の姫君

 「長屋の姫君」(イントロ)
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 夜9時30分〜10時30分・単発ドラマ
 (日本テレビ 昭和42年12月2日(土)放送)


 時代劇コメディー


 日本テレビ「日産スター劇場」


 タイトル『長屋の姫君』


 脚     本 西 条 道 彦
         (落語名作集に拠る)
 音     楽 池 田 正 義
 演     出 津 田   昭
 制     作 石 橋   冠


 登場人物


 清   姫………………池 内 淳 子
 八 五 郎………………長 門 裕 之
 三 太 夫………………市 村 俊 幸
 お し の………………一の宮 あつ子
 学   者………………中 村 是 好
 大   家………………十 朱 久 雄
 お り き………………飯 田 蝶 子
 そ の 他


 1 テロップ(写真)          
   お城の遠景──           
   遠く太鼓の音。           
                     

 2 城中                
   紅葉が美しい。           
   太鼓の音、大きく。         
   廊下を、三太夫と老腰元おしのが清姫を
   追い立てるようにしてくる。     
 三太夫「姫、次はミソヒトモジのお勉強でご
  ざりまする」             
 清姫「(うんざり)三太夫、たった今ナギナ
  タの稽古がすんだばかりではないか」  
 三太夫「姫とはいえどお世継ぎの御身、ブン
  ブ! 文武両道! 諸芸百般に通じておら
  れねばなりませぬ。 ささ……」    
   座敷に学者が控えている。      
   二人はその前に、おしのは後方に座る。
 学者「姫様、本日までに一首お作り頂くお約
  束でしたが、いかがです? お詠みになり
  ましたかな?」            
 清姫「(反抗的に)はい」        
 学者「ほう……お聞かせ頂きましょう」  
   三太夫も大きく頷き、膝を乗り出す。 
 清姫「世の中に家老ほどうるさきものはなし、
  ブンブといいて……」         
 学者「あいや姫様、それは……世の中に蚊ほ
  ど(自分の頬を叩き)うるさきものはなし、
  ぶんぶといいて夜も眠れず、でござる。家
  老ではなく蚊でござる」」       
 三太夫「そのような解説はよろしい! たわ
  けた歌を姫ともあろうお方が(学者に)あ
  んたがいかんのですぞ。もっと人の心を打
  つ歌を姫にお教えくだされ」      
 学者「人の心を打つ歌を……例えば……」 
 三太夫「う? うむ(苦しい)古池やかわず
  とびこむ水の音……」         
 学者「それは俳句でござる!」      
 三太夫「あれ?……姫!(キョロキョロする
  )」                 
   姫は廊下で鳥籠をつついている。   
 三太夫「姫!(飛んできて)どうなされまし
  た」                 
 清姫「(うんざりして)琴が終わったらナギ
  ナタ、ナギナタが終わったら歌、歌が終わ
  ったら書道、茶の湯 生け花……もうホト
  ホト飽き飽きしました!」  (WIPE)
                     

   殿様の前に清姫、三太夫、おしの── 
 殿様「姫、そなたは自分の年を少しは考えて
  みるがよい。しもじもではこの年頃を、の
  う三太夫……」            
 三太夫「売れ残りとか(姫に)お許しのほど
  を……」               
 清姫「売れ残りとは?(本当に知らない)」
 三太夫「は、つまりその……物を売った時に
  でござりまするな……」        
 殿様「もうよい」            
 三太夫「はは……されど姫、明日はお見合い
  でござりまする。その席で姫が歌の一つも
  お詠みになれぬようでは……」     
 殿様「姫、恥をかいてはなるまい。三太夫の
  いう通りにしなさい」         
 清姫「お見合いなんぞしたくござりませぬ」
 殿様「わがままが過ぎるぞ!」      
 清姫「………」             
                     

 3 八五郎宅              
   前シーンとは万事対照的な貧しい長屋の
   一軒、面造り八五郎の家である。   
   部屋中に作りかけの面などの散らかる中、
   八五郎が一人黙々と面造りに精出してい
   る。                
 八五郎「夜が冷たい、心が寒い、山から小僧
  が泣いてくるか……ハックション! ああ、
  浮世の風は冷てぇや」         
   壁にあけた穴から隣の植木屋熊吉が顔を
   出す。               
 熊吉「(呆れたように)八っつあん、お前昼
  めしくったのか?」          
 八五郎「てやんでえ、昼めしも朝めしもある
  かい。こちとら祭でかき入れ時だい!」 
                     

 4 長屋の路地             
   大家がきて、八五郎の家の戸をあける。
 大家「ごめんよ(眉しかめる)」     
   汚れ放題、散らかり放題で、足の踏み場
   もない。              
 大家「やれやれ、男やもめにウジが湧くたあ
  このことだね全く……」        
 八五郎「ああ大家さん、どうぞどうぞ」  
 大家「どうぞったって、入れねえよこれじゃ」
 八五郎「入れねえようにしてあるんですよ。
  押し売り借金取りが多いんでね」    
 大家「借金取りはともかく、お前さんのとこ
  ろへくる押し売りはよほどの間抜けだよ」
 八五郎「まったくね、ハッハッハ」    
 大家「ところで私はその借金取りの口だがね」
 八五郎「ああ、家賃なら祭で儲けて払います
  よ」                 
 大家「大丈夫かね、もうとつき十月もたまっ
  てるんだぜ」             
 八五郎「とつき十月とおか十日もためりゃ見
  事オギャーとくる」          
 大家「シャレをいう奴があるか、お前も赤ん
  坊つくるぐれえの甲斐性がありゃいいんだ
  が、この調子じゃとうてい嫁にくる女はあ
  らわれないね」            
 八五郎「チエ、どいつもこいつもバカにしや
  がって!」              
   と、ヤケ気味におたふくの面をかぶる。
                     

 5 タイトル              
                     

 6 城中(翌日)            
   若君が見合いの席についている。   
   廊下で殿様がそわそわ落ち着かぬ様子。
   三太夫があたふたとくる。      
 殿様「姫はまだか」           
 三太夫「はい、城中くまなく探しましたがい
  ずれにも……」            
 殿様「たわけ者、見合いの相手がまいってお
  るというに、何という不始末!」    
 三太夫「ははあ……」          
                     

 7 神社・境内             
   祭で賑わっている。         
   清姫がお忍びの腰元姿でおしのと共に来
   る。見る物聞く物すべてが珍しい。  
 おしの「姫様、もうこのくらいでよろしゅう
  ございましょう。早くお帰りにならねば…
  …」                 
 清姫「よいではないか、お城の外がこんなに
  も楽しいとは……」          
 おしの「なりませぬ。城中ではきっと大騒ぎ
  になっておることでござりましょう」  
 清姫「しの、これがほしい」       
 おしの「はい。ただ今……(巾着をひろげる
  )」                 
 清姫「あれもほしい」          
 おしの「はいはい……」         
   と右往左往──           
   清姫、いたずらっぽく笑ってフレイム・
   アウト──             
   まもなく帰ってきたおしの、アレ? と
   なる。               
   きょろきょろ探し回るおしのは必死。 
   武士が二人くる。          
 武士A「おう、これはおしの殿」     
 おしの「ああ、これはよいところへ……」 
 武士A「今日は祭見物で城外に?」    
 おしの「とんでもない! 実は……(耳打ち
  )」                 
 武士A「それは一大事! おい!」    
 武士B「はっ……」           
                     

 8 櫛屋の前              
   清姫、珍しそうに店をのぞいて通りすぎ
   る。異常な好奇心だ。        
   遊び人風の男がふところ手でヒョコヒョ
   コ通り、振り向いてポカンとなって見送
   る。                
                     

 9 大川端               
   八五郎、出来上がった面を乾かしている。
   ふと気付くと目の前に清姫が立っている。
   八五郎、疑うように目をこすって見上げ
   る。                
   清姫は八五郎とヒョットコの面を感心し
   たように見比べている。       
   八五郎、あまりいい気分ではない。  
 八五郎「いかがです? おかめとヒョットコ、
  (二つを手に取り)オイと呼びアイと答え
  て五十年、これぞ まことの相老の松……」
 清姫「オイと呼び、アイと答えて五十年……」
 二人「(声をあわせて)これぞまことの相老
  の松」                
 清姫「(感心して)ううむ、人の心を打つ歌
  じゃ……そのほうは歌人か?」     
 八五郎「冷やかしちゃいけねえや。いるんで
  すかい、いらねえんですかい」     
 清姫「ほしい」             
 八五郎「どっちを?」          
 清姫「両方なければ相老にはなるまい」  
 八五郎「話がわかるね、はい二つ、もう完全
  に乾いてますよ」           
 清姫「うん(受け取って行きかける)」  
 八五郎「おっと待った! 金は?」    
 清姫「金? 金がほしいのか?」     
 八五郎「当たり前だよ。誰がただでやるもん
  か」                 
 清姫「金は……そのような汚らわしい物は、
  ない」                
 八五郎「何だって? ふざけるんじゃねえよ。
  本当に持ってねえのか?」       
 清姫「まことじゃ」           
 八五郎「まことじゃ?(呆れて)バカヤロ!
  (と取り返し)冗談じゃねえや……もうみ
  んな乾いてらあ」           
   とあわてて面をかき集める。     
 八五郎「さ、邪魔だ邪魔だ。どけどけ!」 
 清姫「(傍でまだ見ている)よくできた面じ
  ゃのう、そなたが作ったのか?」    
 八五郎「当たり前じゃねえか」      
 清姫「生き生きしておる。生きておる!」 
 八五郎「え?(悪い気はしない)生きておる
  ? そうかい?」           
 清姫「まことじゃ」           
 八五郎「まことじゃ? へへ、ほしいのか?」
 清姫「ほしい」             
 八五郎「ふん……おだてに乗る八っつあんじ
  ゃねえんだけど、まあいいや、やるよ」 
   と二つやる。            
 清姫「そうか(嬉しそうにもらう)」   
 八五郎、集めた面を持って長屋へ──   
 気付くと、清姫が後をついてくる。    
 八五郎「何だい……帰れよもう……」   
 清姫、立ち止まる。           
 八五郎が歩きだすとまたついてくる。   
                     

 10 八五郎宅・前            
   八五郎、眉ひそめながら帰ってきて戸を
   あけ、振り向く。やはり来ている。  
 八五郎「いつまでくっついてくる気だよ」 
 清姫「(かどに立つ)ここは何を入れる小屋
  か?」                
 八五郎「おい、ふざけるのもいい加減にしろ
  ってんだ。ここは俺の家だよ」     
   清姫、一方を見て、さっと家の中にかく
   れる。               
 八五郎「お、おい、なにやってんだ」   
   武士が二人走ってくる。       
 武士A「おい!」            
 八五郎「(反抗的に)……あっしですかい?」
 武士A「決まっとる! この辺りで、腰元風
  の美しい娘を見かけなかったか?」   
 八五郎「腰元風? ああ、そういやあさっき
  あっちへ行ったな」          
 武士A「それ!(走り去る)」      
                     

 11 八五郎宅              
   八五郎、ブツブツいいながら入ってくる。
 八五郎「フン! 人に物を訊ねる時はもっと
  丁寧に聞くもんだい」         
   清姫、心配そうにしている。     
 八五郎「おう、大丈夫だぜ」       
 清姫「危ういところをお救いくださり、礼を
  いう」                
 八五郎「(固い挨拶に慌て)いや礼だなんて」
 清姫「いや、そなたは命の恩人、あだやおろ
  そかには致さぬ」           
 八五郎「態度デカいねえ。ははあ、お座敷勤
  めがつらくなって逃げ出したんだな? お
  座敷はどこだい」           
 清姫「あっちかな?」          
 八五郎「あっちかなって、自分のご奉公先が
  わからねえのか?」          
 清姫「生まれてはじめて外出したるゆえ……」
 八五郎「生まれてはじめて……冗談じゃねえ
  や、たいけ大家のお姫様じゃあるまいし…
  …しようがねえ、乗りかかった船だ。お座
  敷を探して送ってやらあ」       
 清姫「いや!」             
 八五郎「いや?」            
 清姫「帰りとうはない」         
 八五郎「(呆れて)手がつけられねえな、一
  体これからどうするつもりだい」    
 清姫「ここがよい」           
 八五郎「ここ? そりゃあんたここは……え!?
   じょ、冗談じゃねえや」       


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